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雨の日の河原に大きなテントを張る
2010/07/07(Wed)
マリンブーツで河の中をじゃぶじゃぶ歩いた後、テントの中で雨降りを眺めて過ごす。湿気、すばらしい。大好きだ。そう思う。桜が咲いたら花見に出かけるように、雨が降ったら雨を眺めに出かけるのがいい。河原で過ごしていると田んぼのある風景の中で暮らしていた頃の感覚がよみがえる。雨に打たれる庭木を眺め、軒先からいくらも落ちてくるしずくを眺め、永遠に続く雨だれの音に身をゆだねて過ごしていた頃の、満ち足りた気持ちがよみがえる。エアコンのリモコンにすがりついている人たちのことが思われる。こんな心地よい雨の気持ちを味わったことがないか、その感覚を忘れているのか。

物心ついたときから雨は好きだった。それがいつの頃からかうっとうしく思われ、雨に知らぬふりを通すようになっていた。鉄筋の建物で暮らすようになってから、雨はただの湿気くらいの意味しかなくなってしまったのかもしれない。湿気は「むしむしする」と嫌われ、エアコンはフル活動で空気から水気を絞り続ける。「暑い」という声も聞こえてくる。もちろん私だってむしむしすると感じ、暑いと感じはするけれど、リモコンを片手につぶやくそんな言葉には、湿度や温度の変化に対する過剰な嫌悪、ほとんど恐怖に近いものがこめられているように思われる。エアコンをつけても部屋の温度が安定するまで少々の時間が必要だがそれが少しも待てない。体温が上昇すると体の一部が溶けくずれでもするのだろうか、そのあわてようといいヒステリックな様子といい、見ていて気の毒に思われる。今の時期からこんなに強いエアコンの風を浴びていて、この人たちの体はこれからの季節を気持ちよく越せるのだろうかと、おせっかいな気持ちもないわけではない。

体の水はけをよくするのはだいじだ。体内の血液や水のめぐりが順調であれば体に熱がこもることはなく、湿気も暑さも恐がる必要はない。たいていの湿気も温度も気持ちよく過ごせるように体はできている。自然の季節のめぐりをそのまま感じて過ごすことが一番快適に感じられもし、最終的には一番ラクに生きてゆく選択にもなる。しかもここは日本。地球上でも温暖でマイルドな気候のほうだ。エアコンを使えば使うほど、自分が気持ちいいと感じる幅がせばめられてゆく。快の領域がせまくなれば不快な領域は広がる一方である。最終的には自室に閉じこもるしかない。エアコンにつくってもらった環境の中でしか暮らしたいとは思わなくなる。

このまま一晩中、河の音をまくらにして朝まで過ごしたい。心の奥まで水に洗い流されていたい。そうも思ったのだけれど、夜半に増水しやしないかとやきもきしてまで過ごす執着はないのでテントをたたむ。片付け終わった後の地面には、さきほどまで寝転がっていた自分の痕跡がかすかに残っている。わずかに切り取られた貴重な時間がそこには確かにあった。「ありがとね。ここはほんとにいいところだった。また来るよ」。
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