人は死人のポーズで死ぬとは限らない-筋肉をゆるめ、ほぐす-
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2012/06/08(Fri)
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ヨガでは床で大の字に寝る「死人のポーズ」をさせられるが、全身脱力しやすく一番リラックスできるというのはウソである。体の条件によってはあれほどつらい格好もない。
少し固めの床に大の字になって寝てみよう。全身の重みを支えているところが背中で感じ取れるだろうか。強化ガラスの床を裏のほうから見ると、大の字になった背中側の様子がよく分かる。さらに圧力に反応するセンサーをとりつけて、圧力が強くかかるところは黄色に、それから次第に橙いろ、赤、紫、青など色で圧力の違いを見せてもらえば、どこが強く押しつけられ、どこが浮いているかは一目瞭然である。 下半身はかかとや腰回りで支えられ、上半身は主に背中や肘、それに頭が支えるが、どこでどう支えるかについては大いに個人差があり、変化もする。 本来、人の体はいろんな姿勢に柔軟に対応できるようにつくられている。少々固い床の上に大の字になって寝ようと、うつ伏せになって寝ようと、全身にかかる重力を全体でらくに受けとめ、支えられるようにできているものなのだ。 しかし大の字になってしばらく寝ていると、腰がつらい、あちこち痛いということがある。頭がムリに床に押しつけられている感じがして肩や首がつっぱったり、床で支えている肘が痛かったり。背骨がごつごつ床にあたって耐えられないとか、足を片足ずつ上げようとすると、びくとも動かないこともある。 本人の意思でそうなっているのではないから、よほど注意しない限り気づかないが、たいていは支えに上下左右片寄りが見られる。体重をのせやすいところと、体重がのりにくいところができてしまう。不均衡なのである。 うつ伏せの姿勢も同じことだ。 うつ伏せが長くできない人は上半身にこわばりをかかえている。左のほほ骨を床につけて、顔をきれいに右に向いたうつ伏せができるか。右のほほ骨を床につけて、顔がきれいに左に向いたうつ伏せができるか。顔を真ん中にもってくるとあごで支えることになるが、どこを向いてもうつ伏せの姿勢を保持して、つらくならないか。 それが健康の目安になったりする。 そういうことに関心を持つほうがよほど実りがあるというものなのだ。 体の調整をやったあとは、やる前よりもじょうずに大の字にもうつ伏せにもなれる。 体の条件がととのい、いろんな姿勢に対応できる能力を得たのである。 このような片寄りの現象は、イスに腰掛けたときにも、正座をしたときにも、立った姿勢、かがんだ姿勢、ありとあらゆる姿勢や動きに見られる。 それを不均衡、アンバランスという。 こうした不均衡・アンバランスが、筋肉のこわばりを増長し、不自由な体すなわち体調不良をもたらすという考え方がある。その考えが有効ならば、体の不均衡・アンバランスを軽減することを目的とした、操体法のような体の調整も有効だろう。あとはやってみるしかない。 姿勢や動きにともなう現象として見られる不均衡・アンバランスは、体の内部に生じているゆがみやひずみをあぶり出している。ゆがみ・ひずみを漢字で書くと、「歪み」すなわち「不正」の組み合わせとなる。 そこで、姿勢や動きにアンバランスが見られるときは「骨格に不正がある」という。 大の字やうつ伏せで全身脱力して数分ほどらくに寝ていられないという場合には、骨格の不正で日常大いにソンをしていると思われるが、本人はそうは思わない。 体の調整が進んで日常生活の疲れも軽くなり、ふと気がつくと、大の字に寝るのもうつ伏せで寝るのも苦にならなくなっている。それでもやはり、骨格の不正が自分を苦しめていた元凶だったとは、なかなか認めようとはしない。そういうものなのだなあと思う。 スポンサーサイト
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