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安定した生活・不安定な生活
2010/12/07(Tue)
大企業の正社員をする者が身内にいて、生活ぶりを聞かせてもらうことが度々あるが、なかなか不安定な日常を送っているように思われる。この人は子どものころから安定志向で、きちんと学校に行き、きちんと就職を決めた。すべては安定を求めるがゆえであった。しかし目まぐるしい変化の中でのんびり過ごす自分の時間などなかなか取れない。仕事もあるが家庭のこともある。社員のあいだでは過労と見られるぽっくり死も少なくないし、神経的にやられてしまうのもめずらしくないなどと聞けば、こちらも荒れ狂う波間にゆられる船にでも乗っているような気分になる。しかし社会全体が不安定なのだから仕方がないのだそうだ。これでもまだ自分は安定しているほうじゃないかと言っている。

うちの近所のウォーキングコースの川べりには、そこに住み着いている人々がいる。ホームレスと呼ばれることもあるが、彼らとても仕事をしている。主に空き缶を集めて現金収入を得ているようだ。私の見る限り、彼らもそれほどのんびり過ごしている様子ではない。しかし彼らの生活がとくに「不安定」かというと、彼らにも彼らなりの日常があり、むしろ平穏に過ごしているようにさえ見えることもある。近隣の住民とのつきあいもわるくない。というのは少しの支えや助けの手をそっと貸してくれている様子が感じられるからだ。彼らは単独で過ごすことが多く、口げんかなどは見たこともない。日常をもっとも乱すものといえば、お役所からたまに人がやってくることである。あなたがここにいるのでみんなが迷惑している。だからこんな生活はもうやめろ。それにこんな生活はあなたのためにもならない。そんなことを長々として説教している。しかしそれもそれほどひんぱんではない。説教のあとは何ごともなかったかのように同じ日常が戻ってくる。

彼らのねぐらは橋の下であるが、彼らの居ついていない橋の下は学生たちのたまり場になっていて、むしろ近づきがたい雰囲気だ。弁当がらやタバコの吸殻、空き缶などが散らかりほうだいで荒れている。また、洪水のさいに、辺り一帯で最も広い橋の下を占拠していたサイトが役所の手によって撤去されてしまったが、そこは散歩に来た人の憩いの場ともなっていた。天気のよい日は休憩用にイスが並べてあり、ウォーカーたちどうしで談話している姿もよく見られた。すばらしく大きく毛並みのよいペルシャ猫が二匹もケージに入れてあるのに私はびっくりしたことがある。ここの主は釣りをよくする人で、釣り人たちと一緒に釣りを楽しんでいた。立派なひげをたくわえた老人で、通行人と話し込む姿がよく見かけられた。しかし今ではそこは文字通り役所の縄張りというか、黄と黒のしまロープで囲まれた、ただのむき出しの地面でしかない。誰もそこに立ち止まって集うということもなく、さびれたように静かだ。

彼らはたいていテントやブルーシートや板張りなどで囲んで部屋をつくるが、中には私生活を公にするかのように、囲いのないまま家具を並べ、広々とした吹きさらしの自室で日記を書いている者もいる。釣りをする者も、犬や猫を飼う者も少なくない。役所が彼らの住まいを撤去しに来なければ、それなりの安定を得た生活のように思われることもある。
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